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リッチなカレーの店 アサノ

(東京)
住所: 東京都町田市原町田4-5-19 町田仲見世飲食街
電話: 042-729-7258

 今回私がAwards推薦店を選ぶのは本当に悩ましかった。普段から「好きな店・美味しいと思う店って順位が付けられないし、そもそも気分によって変わっちゃうよね」と思っているのに、10のお店を選ばなければいけなかったから。

 でも推薦することにあんまり迷わなかったのが「リッチなカレーの店 アサノ」。だって、「カツカレー」に関しては、初めて食べたときから今日まで変わることなく私のナンバーワンであり続けているお店だから。

 何が好きかって、まずロケーション。いきなり味の話じゃなくて恐縮だけど。町田の仲見世飲食街というごちゃっとしたアーケード街のはずれ。狭い間口、店内も狭い。街に溶け込んだ普通のカレースタンドにしか見えないお店で、普通じゃない独特のカレーが食べられるというギャップがたまらんのです。

 次に気に入ったのは人。初めて訪れたのは、今考えると15年以上前のこと。「とにかくカツカレーが旨いけど店主が頑固」という情報だけを頼りに行ったんだけど、たしかに口数の少ない頑固親父然とした「じいちゃん」といっても良いような年の店主がいた。初めてのお客さんが「タマゴカレー」を注文すると「最初だったらカツカレーにした方がいい」と説得を始めてびっくりした。でもその横にはにこにこ笑う奥さんがいて「この人はね、口は悪いけど腕は一流、味は間違いない」と、『じいちゃんLOVE』がにじみ出ているんですよ。「ああ、年をとったらこんな老夫婦になりたいな」と、ファンになってしまった。

 でも一番好きになったのはやっぱりカレー。カツカレーっていうと粘度の高いトロトロのカレーをカツに合わせるのが一般的だと思う。とんかつ屋のカツカレーが典型だけど、カツを美味しく食べるためのソースとしてのカレーという位置づけだとすると、トロトロのソースなら衣の食感を損なわない。

 でもアサノのカレーはしゃぼしゃぼでスパイシー。正直、失礼な話だけど、この場所の、この見かけの店で、この老夫婦が、こんなカレーを作るとは思ってなかったのでびっくりしたよ。

 一度店主に聞いた話によると、近所に住んでいて知り合ったマレーシアの方にレシピを教わり、それを日本風のカレーの作り方に取り入れてオリジナルのレシピにしたのだとか。ベースには日本のカレーならではの旨みがあり、アジアンカレーに近いスパイス感があって、「リッチなカレー」の看板文句に負けない、今食べてもなお古さを感じないカレーです。カツがなくたって旨いカレーがあるからこそカツカレーが旨いんです。

 もちろんカツも非凡。注文が入ってから揚げるカツに使う豚肉は高座豚。今でこそ銘柄豚は珍しくもないですが、ブランド豚なんて言葉を知らなかった頃から高座豚。「うちのカレーに合うから、ちょっと値段はするけど使ってる」と昔聞いた気がする。とにかく揚げたてのカツをサクサクと切る音が聞こえたら、もうすぐカレーが到着する。期待が高まるこの瞬間がたまらなく好き。で、ライスの山によりそうカツは、とんかつ屋と比べると薄めで、パン粉の目が細かめ。さらに一般的なカツカレーより細くカットされてライスにのります。このカツのバランスが、しゃぼしゃぼのカレーとの相性が抜群なのです。もっとカレーの旨い店、もっとカツの美味しい店はもしかしたら他にあるのかもしれないけど、「カツカレー」という料理のバランスというか完成度というか、そういう意味でアサノ以上のカツカレーには出会ったことがありません。

 こんな素敵なアサノだけど、最後にもう一度、人の話。大好きなお店だけど、通ううちに店主ひとり体制になり、行くたびに「このカレーが食べられるのはあとどのくらいだろう」と勝手に心配になったりしていた。でも、いつの頃からか厨房に息子さんが入るようになり、勝手な心配は不要になった。個人のお店は後継者問題で苦労して一代限りで終わってしまうことも多いだけに、本当に喜ばしい。

 今では初代店主は案内係として週末に店に顔を出すけど、店を仕切っているのは2代目だ。店の雰囲気は変わったけど、カレーの味は変わらない。今でもカツカレーを頼むと、揚げたてのカツをサクサクっと切って、リッチなカツカレーが提供される。やっぱり私にとってアサノのカツカレーはナンバーワンでありオンリーワンだと思う。

(文:三吉)